音を見る装置を簡単に作る方法



English version is here.
共鳴スピーカーあるいは振動スピーカーとは、取り付けた板状の物を振動させて音を出す方式のスピーカーです。
その様なものがあると知った時、これを使えばクラドニ図形を見る装置を簡単に作れるのではないかと思いつきました。試作したところ、機能するものができたので紹介します。
音を可視化する装置はInstractablesにもいくつかありますが、以下の構成要素が必要である様です。
- 板
- スピーカー
- スピーカーの音を板に伝える部品
- オーディオアンプ
- オーディオアンプ用電源
- トーンジェネレータ
Bluetooth接続ができる共鳴スピーカーを使えば、以下の様にかなり部品を減らすことができます。
- 板:鉄板を使いました
- スピーカー:共鳴スピーカーを使います
- スピーカーの音を板に伝える部品:共鳴スピーカーを磁石で鉄板に貼り付けるだけで良いので、特別な部品は要りません
- オーディオアンプ:共鳴スピーカーに含まれているので不要です
- オーディオアンプ用電源:バッテリー内蔵の共鳴スピーカーを使えば不要です
- トーンジェネレータ:スマートフォンもしくはタブレット端末のアプリで代用できます
3Dプリントされた部品を使うので、これ以外に3Dプリンターが必要です。
私が使ったものと異なる共鳴スピーカーやバネ、鉄板を使う場合、部品形状の変更が必要になります。その場合は「Chladni Plate Holder.f3d」をFusionで開いて、パラメータを変更してください。
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Supplies


- Bluetooth接続ができる共鳴スピーカー
- 私は以下のものを使いました。両面テープ付きのマグネットシートが付属していたので、それを使っています。両面テープ付きの吸盤も付属していましたが、吸着する力が弱くてスピーカーが自重で落下したので、そちらは使っていません。
- https://www.amazon.co.jp/dp/B0DMVWYDXR
- 鉄板
- 300mm x 300mm x 1mmのものを使いました
- https://www.amazon.co.jp/dp/B08KCNS9KV
- バネ
- どんなものが必要になるか事前にわからなかったので、バネセットを購入しました。バネは4個必要です。
- https://www.amazon.co.jp/dp/B0CGRCSBZC
- 二重丸カン
- これも事前にどんなものが必要になるかわからなかったので、セットで購入しました。結局10mmのものを使いました。これも4個必要です。
- https://www.amazon.co.jp/dp/B0C9Q77VMJ
- 塩
- 私は塩を使いましたが、色のついた砂を使う場合もある様です。
- トーンジェネレータアプリをインストールしたスマートフォンもしくはタブレット端末
- 私はiPadで"Audio Function Generator"というアプリを使いました。お好きなものを選んでください。
- 鉄板の固定とこぼれた塩を回収するための3Dプリント部品
3Dプリンターで部品を印刷する


3Dプリンターで以下の部品を必要数、印刷してください。いずれもサポートは不要です。
- holder: 4個
- connector: 4個
- connector bolt: 16個
- foot: 4個
- sp_center: 1個
- sp_holder: 4個
以下はオプションですので必要に応じて印刷してください。これらは偏って山になった塩を平らに均すために使います。
- rake: 1個
- rake 2: 1個
枠を組み立てる




holderとconnecterの穴位置を合わせて、connecter boltを使って固定してください。4個のholderを繋げて、最後の写真の様な枠を作ります。ボルトがきちんとねじ込めていれば、connecterの面は平らになるはずです。
鉄板の四隅に穴をあける


ドリルを使って、鉄板の四隅に穴を開けてください。私は端から5mm程度の位置に穴を開けました。
二重丸カンでバネと鉄板をつなげる






最初の写真の様に、四隅に開けた穴に二重丸カンを通します。そして二番目の写真の様に、そこにバネを取り付けてください。
バネはバネセットの中で一番短いものを使いました。測ってみると直径5mm、バネの部分10mm、全長18mm、線の太さ約0.5mmでした。
違うバネを使う場合は、footについているフックの形状を変更する必要があるかもしれません。添付の「Chladni Plate Holder.f3d」を開いてパラメータを調整してください。関係するパラメータはhook_width, hook_distance, hook_heightです。
鉄板を吊り上げる




最初の写真の様に、鉄板を置きます。次に二番目の写真の様に、枠のコーナーに空いている長穴にfootのフックの部分を差し込んで、バネの輪になっている部分に引っ掛けます。そのままバネを外に引っ張り出し、footをholderに差し込んで三番目の写真の様にします。そしてこれを四回繰り返せば、鉄板を吊り上げることができます。
下から覗いて、四番目の写真の様に鉄板が浮き上がっていれば成功です。鉄板がholderと接触している場合は、短いバネに変更するか、あるいは前のステップで説明した様にfootについているフックの形状を変更する必要があります。
スピーカーを取り付ける






全体をひっくり返して、中央に共鳴スピーカーを貼り付けます。スピーカーには予めマグネットシートを貼り付けておきます。
最初はこの状態で音を出して実験していたのですが、振動によってスピーカーが動いてしまう問題が発生しました。そこで位置決め部品を追加しました。それがsp_centerとsp_holderです。sp_centerの円柱をsp_holderに嵌め込んで、sp_holderの反対側をfootに嵌め込むと、三番目の写真の様になります。
sp_centerは共鳴スピーカーのサイズに合わせてモデリングする必要があります。関係するパラメータはspeaker_diameterです。
塩を撒いて音を出す
あとは塩を撒いて音を出すだけですが、鉄板が水平であることを確認したほうが良いでしょう。
塩粒が移動する方向が偏っている場合、鉄板が傾いている可能性があります。私は折り畳んだ紙を足の下に敷いて鉄板が水平になる様に調整しました。
大きな音を出すことになるので、実験する前に周囲の人にその旨を伝えておいたほうが良いでしょう。
実験が終わって塩を回収する際は、四隅の穴を利用できます。塩をここに落としてからfootを外せば、footが容器として機能します。
実験結果
100Hzから10kHzまで、100Hz刻みで100回実験した結果を添付します。
塩粒がほとんど動かない周波数が意外と多かったと感じました。また周波数が高くなってくると塩粒の動きが鈍くなり、模様ができるまで時間がかかる様になりました。パワー不足を感じましたが、自宅であまり大音量を鳴らすわけにもいかないので、塩粒を小さくするとか、鉄板を薄くする方向で考えたほうが良さそうです。
写真に赤や黄色が写り込んでしまったので、この色でプリントしたのは失敗でした。黒いフィラメントを使ったほうが良かった気がします。
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追加検証



スピーカーが浮いているせいで、塩粒の動きが悪くなっている可能性を考えて、スピーカーを支える台を作ってみたのですが、結果は変わりませんでした。
薄い鉄板を使った実験(2025/6/5追加)

板を薄くすることによって塩の粒が動きやすくなることを期待して、455x455x0.5mmのメッキ鋼板で実験してみました。
前回と異なり、模様が全く現れないケースがなくなりました。その意味では成功です。しかし周波数が高くなると模様がぼやけてしまうことは変わりませんでした。
模様の対称性が高くなった様に思えますが、これは鉄板が大きくなって前回の実験では見えなかったところまで見える様になったせいなのかもしれません。
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変更したこと



- 鉄板の大きさ:300x300x1mm → 455x455x0.5mm
- 前回の鉄板はレーキで傷をつけたところから錆が進行してしまったので、今回はメッキ処理がされたものを入手しました。
- 板の面積が広くなり、同時に薄くなったために、板が自重で撓んでしまいました。このためスピーカーの台が必須になりました。またバネの張力を増すために足の形状を変更したのですが、そのせいで足が外れやすくなり、とても扱いづらくなってしまいました。改善の余地があります。Fusionのファイルを添付しますが、完成度が低いものだと思っておいてください。また小さな3Dプリンターでは印刷できないかもしれません。四分割ではなく、もっと分割数を増やす必要があるでしょう。
- 前回の実験では赤色と黄色のフィラメントを使って部品を印刷したのですが、今回は全て白のフィラメントで印刷しました。そのため写真に余計な色が映り込まなくなりました。
- 塩 → カラーサンド
- 模様が見やすくなる様に、緑色のカラーサンドに変更しました。私は150gのカラーサンドを購入したのですが、20-30%ぐらいしか使わなかったので、もっと少量のものを買えば良いでしょう。